ワインの資格試験を目指す人のための ワインコーチ、川口 梓です。 |
100年前に米国にあった禁酒法は、
現代を生きる私たちにとって、
昔ばなしや神話のような存在でした。
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ワイン試験のテキストにも出てきました。
禁酒法は、アメリカのワインを学ぶときに、
必須となる知識ですから。
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でも「禁酒法の時代が、あったらしい。」 |
その程度の認識でした^^ |
まったくの他人事だったので、これまで
興味を持ったことはありませんでしたが、
興味が涌いてきました。
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東京や多くの地域で、緊急事態宣言により、
飲食店での酒類の提供が禁止になったことが
きっかけです。
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◆禁酒法は、なぜできたのか?
◆禁酒法によって、得たものと失ったものは?
◆コロナ禍で活かせる教訓は?
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そんな疑問を解決したくて、関連する文献を
いくつか読んでみました。
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禁酒法とは? |
禁酒法時代とは、1920年から1933年の
14年弱です。
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他の地域に例を見ない、米国の特殊な歴史です。
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1920年に施行された禁酒法ですが、
起源は植民地時代(1493年~1776年)の歴史まで
遡ることができます。
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その時代の背景や因果関係は、
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・蒸留酒の文化を持つ国からの移民が
増大した
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・不摂生な飲酒家(酔っ払い)の存在
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・19世紀前半に、穀物が供給過剰になり、
安いウィスキーが大量に出回る
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・過度の飲酒が社会問題になる
(社会風紀の乱れ、家庭内暴力、アル中が原因の貧困など)
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・社会の指導的な地位にあった聖職者にも、
飲酒による不道徳と無秩序が広がる
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・節酒や禁酒運動が大衆化する
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禁酒運動が大きなうねりとなって、
ヴォルステッド法(Volstead Act)と呼ばれる禁酒法が
制定されました。
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つまり、1920年1月、全米でアルコール飲料の
製造と販売が禁止されました。
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当初は、ビールとワインは禁止の対象には
含まれていなかったそうなのですが、
最終的には、醸造酒も禁止されることになった
という点は、ワイン史にとって残念な歴史です。
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禁酒法で失ったもの
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・移民は米国社会で差別を受け、
社会からドロップアウトした人たちが
ギャングとなって、悪いビジネスに
手を染めていきます。
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・アルコールの密造や密輸が資金源となり、
ブラックマーケットが繁栄していきます。
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・粗末な原料と設備で作った質の低い蒸留酒は、
中毒を引き起こしました。
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・政治家による汚職
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・ギャング同士の対立と紛争
(銃撃、爆破、殺人etc)
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・密造酒が飲めるもぐり酒場での売春
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ありとあらゆる犯罪が、
なんでもござれの時代だったようです。
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小説『夜に生きる』では、そんな時代を生きる
ギャングたちの様子が、リアルに描かれています。
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この小説の重要なキーワードのひとつが、
「禁酒法」です。
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彼らは、蒸留酒の密造で得たお金と暴力を使って、
酒・ギャンブル・女、なんでも手に入れます。
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ギャング同士の銃撃戦や獄中での争いの
激しい描写に、読みながらドキドキしました。
(ギャングの家に生まれなくて良かったー(+_+))
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特筆すべきなのは、
禁酒法の時代にありながら、
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アルコールの消費量が増えたこと
アルコール中毒者がそれほど減少しなかったこと
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1929年10月に大恐慌が始まり、
消滅したアルコールの税収を補うために、
産業資本家たちが高額の納税義務を
課せられるようになります。
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彼らはもともとは禁酒派だったのですが、
禁酒法の廃止を求める立場に変わります。
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そう。
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禁酒法の廃止を求めたのは、壊滅的な
目に遭った酒造業者ではなかったのが
興味深いところです。
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ついに、1933年に、アルコール飲料が
合法になります。
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14年弱におよぶ禁酒法時代に失ったものは、
はかりしれません。
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社会秩序が乱れ、多くの凶悪事件が起こっている間に、
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アメリカにあったカクテルの文化が衰退し、
多くの蒸留所やワイナリーの歴史が
断たれました。
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禁酒法で得たもの
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それでも、禁酒法で発展してものも、
少なからずあったようです。
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蒸留酒の技術や文化が発展しました。
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✓ヨーロッパの蒸留酒、
✓カナダのウィスキー
✓カリブ海のラム
✓南部のテキーラ
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が、よく売れました。
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加えて、1920年には女性が参政権を得て、
自由を享受する大きな手段として、
お酒を飲むようになりました。
(禁酒法時代に入った年なのに)
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アルコールが非合法のため、誰とどこで
飲むかが重要だったこの時代に、
シチュエーションに応じた飲酒文化が
広がっていきました。
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禁酒法から得られる教訓?
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失われた14年に意味があったのだろうか?
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米国の禁酒法と日本の一部の地域での
飲食店での酒類提供の禁止は、
原因も社会情勢もまったく異なるので
比較することはできませんが、
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現代の日本に置き換えられる教訓としては、 |
禁酒を義務付けると、
詐欺行為や犯罪が増える可能性が高くなる、
ということが言えます。
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中学生を、ルールに縛りつけると
かえって悪いことなかりする
ようなイメージです。
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飲食店でのアルコール提供を禁止することが、
本当に感染防止につながっているのでしょうか。
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